Webライターを13年やって気付かされた書き方のコツ

2021-08-13 17:49:00

 かつて紙媒体のライターだった私が、Webライターになってから13年ほど経ちました。これまで大小さまざまなWeb制作会社や広告代理店からお仕事をいただき、1万件を超える記事を書いてきました。

そんな私には、これまでの経験の中で身に付いたことや気付かされたことがたくさんあります。ライターを始めてすぐに気付かされたことから、10年以上続けてやっと気付いたことまでいろいろです。

そこで、まだWebライターの仕事を始めたばかりの人や、これから記事を書いてみたいと思っている人に、私が経験上感じた書き方のコツをお話しします。

Webライターは自分本位ではダメ

私がWebライターの仕事を始めてすぐに痛感したことは、自分本位の書き方では記事にならないということでした。紙媒体でも文章を書いてきた私ですが、「他人が読むための文章を書いている」ということを意識させられたのはWebライターになってからです。

紙媒体で書いていたのがエッセイや自分が考えた創作のストーリーだったからかもしれません。

最初に気付かされたのは、ライターの文章は自発的に書く自身のブログの文章とは違うということです。

私はWebライターとして文章を書き始める前に、毎日個人的なブログでかなりの長文を書いていました。8年間書き続けたブログなので、記事の作成と同時進行していた時期があります。

そのような中で、Webライターとしてブログ記事を書く依頼を受けました。あるクリニックのスタッフ目線で書くことが条件です。病気を早い段階で見つけることの重要性や、健康診断を受けることの大切さなどを伝える文章を求められました。

私自身、病院やクリニックで働いていた時期があったので、内心楽な仕事だと思って引き受けたのですが、普段書いている書き方ではダメだったのです。

ブログに載せる文章でも、依頼を受けて書く文章は、発信者としての目線よりも読み手の目線を重視して書く必要があります。自分が自発的に書く文章は、自分がおもしろいと感じることを書きたいように書けばそれで済みますが、依頼を受けて書く文章はそういうわけにはいかないのです。

与えられたテーマの中で読み手が最も知りたいことは何かを考え、最後まで興味を持って読んでもらえるような工夫をしなければなりません。

文法的に正しい文章を書くことや、依頼の条件に合わせて文章を書くということは、ライターとしてわずかでもお金をもらうのであれば当然のことですから、ここであえて細かく言う必要はないでしょう。ライターとして個々の文章に差が出るのはその先です。

読み手がおもしろいと感じる切り口で文章を書かなければ、わざわざライターが依頼を受けて文章を書く必要が無くなってしまいます。
観客よりも先に笑ってしまうお笑い芸人があまりおもしろくないのと同じで、自分だけがおもしろいと感じる文章を書いてしまっては、ライターとしては失格なのです。

依頼内容と読み手を意識する

Webライターとして仕事をしていると、同じテーマの仕事がいろいろなところから同時に来ることがあります。

例えば、冬であれば「肌荒れ対策」「冷え性対策」。この2つに関するお役立ち記事は女性ライターの元によく依頼が来るので、毎年のように大量に書くことになります。

そのとき、あなただったら「前に書いた記事のてにをはを変えて、適当に書いておけば楽だ」と思いますか?それとも「困ったな、この間書いたのと同じテーマだ。どうしよう」と思いますか?

ライターの仕事を始めたばかりの私は後者でした。前に書いた記事を土台にして、新しい情報を少しプラスすれば書けるからです。しかし、それでは巷の記事の中に埋もれてしまうということに気付かされました。Webライターは、自分の記事を書く際、情報源を求めて何度も検索を繰り返します。

そんなとき、検索に引っかかってこないような、周りの記事に埋もれてしまう文章を書いたのでは意味がないと実感しました。そのおかげで、先に挙げたどちらの考え方でもなくなったのです。

私は依頼内容を見たとき、「依頼主は何を伝えたいんだろう?読み手はどの層なのかな?」というところがまず気になります。というのも、依頼主が化粧品会社か皮膚科クリニックか健康食品会社かというだけで、記事の切り口を変える必要があるからです。

特に、読み手の見極めは大事なポイントになります。読者が10代の学生さんか、20代のOLさんか、それとも30~40代の主婦層かによって、読みたいと感じる内容がまったく違うからです。

同じ冬対策でも、すっぴん生足の女子学生なら、手やひざなどのかさつき対策や制服の下に何を履いて冷えを防止すればよいかを知りたいかもしれません。

20代OLならオフィスの冷え対策に使えるグッズや、乾燥小じわを目立たせない化粧下地の情報を知りたいと思う可能性があります。子育て中の主婦層なら、水仕事に負けない手荒れ防止法や子供の肌荒れ対策が気になる人もいるでしょう。

年齢層や属性によって選べる対策方法やお金のかけ方が違ってきます。読み手の見極めが大事なのは記事の方向性を決めるためだけではありません。どんな言葉を使うかにも影響します。ターゲットが決まれば言葉もその層が理解しやすいものを選べるからです。

「ライティングテクニック」というと、文章を実際に書く段階の技術だと思うかもしれません。しかし、他人が読んで理解できる程度の文章を書ける人は、ライターでなくても世の中にたくさんいます。
本当に必要なライティングテクニックは準備段階にあるのです。

書く前にどのような準備と段取りができるかが、素人とプロの差になるということを実感しています。

具体的な内容で伝える

「具体的に書いた方がわかりやすい」というと、なぜ今更こんな当たり前のことをいうのかと思うかもしれません。しかし、ライターとして文章をたくさん書いていると、案外忘れてしまいがちなことなのです。

パッと見た目は名文に見えるのに、読んでもなかなか理解できない文章に出会ったことはありませんか。

かっこいい言葉がたくさん使われていて、文法的には間違っていないのに、何が書かれているのかが頭に浮かばない迷文。ライターはたくさんの言葉を知っている分、ときには抽象的な文章を書いてしまうこともあります。

決められたテーマについて100文字で表現するのと1000文字で表現するのとでは、どちらがライターの個性を出しやすいでしょうか。当然1000文字の方ですよね。
実は、ベテランライターが任せられる文字数の多い文章よりも、初心者ライターが挑戦する文字数の少ない文章の方が難しいケースがあるのです。

特に短い文章でライターの個性を出すのはかなり難しいことだといえます。主語、述語に最低限の肉付けをしたらそれで完成という形になってしまうため、誰が書いても同じような文章になりやすいからです。そのため、コピペを疑われたり、承認してもらえなかったりする原因になることもあります。

しかし、いくら文字数の少ない文章であっても、具体的な内容が盛り込まれている文章は読み手の興味を引きます。

信ぴょう性のある文章を書く

長年Webライターを続けてきて、仕事をするたびに実感するのが、信ぴょう性のある文章を書くことの大切さです。Web上にはたくさんの情報が溢れていますが、間違った情報もたくさんあるからです。

過去には正しかった情報でも、時代の変化や法律、税制などの改正のために、結果として間違った情報になってしまっていることも多々あります。そんな間違った情報が、検索結果のトップページに並んでいることがあるということをライターをしていると思い知らされます。

私が依頼される仕事は、説明文やコラムの執筆が多いので、選ぶ情報が間違っているととんでもないことになります。「何年か先に読んでも問題がない文章にしてほしい」という依頼が多いのも、情報の信ぴょう性が重視されているからでしょう。

記事を書く際に、検索結果のトップに出てきたサイトだけをサッと流すように読んで執筆してしまうと、本来書かなければならない内容を落としてしまうことがあります。なぜなら、トップページに出てきたサイトの内容をそのままコピーするようにして書かれた、複数のコピーサイトで埋め尽くされていることがあるからです。

偽情報をもとに作られた偽情報のコピーに踊らされて書くと、信ぴょう性のない記事を自分も作ってしまうことになります。

長くWebライターをやっているので、検索結果に挙がってきた記事のほとんどが自分の書いたものだったということもありました。自分が書いた文章を情報として扱ってよいのかと正直悩むこともあります。信ぴょう性のある文章を書くためには、日々勉強が必要だということを実感させられる毎日です。

間違った情報をもとにして記事を書くことを防ぐためには、日常的に周りの出来事に対するアンテナを貼っておくことが必要だと思います。

たとえば、法律や税制の改正、社会情勢の変化、新商品の動向などはチェックして、新鮮な情報を頭の中に入れておくことも大事なことです。

実際に文章を書く際の技術だけでなく、正しい情報を取捨選択できるようにすることもライターが身に付けておきたいコツだと私は思います。